いつか海風潮騒へ

とりとめのない平凡な日常を綴っていきます。

切なくなったり怒りを覚えたり

数日前の友達の言葉に、釈然としないものを感じました。モヤモヤ第2弾になっちゃった。あ、でも、自己消化済みです。

 

彼女は、とても恵まれた境遇の人です。長く仕事も続けていて、自信に満ちています。ご主人は、家族思いで彼女にも優しい人。今度、夫婦で海外旅行にも行くそう。3人の子供は、全員教育職に就いていて、順風満帆な様子。

 

で。

小学校の教員をしている彼女の子供の話を聞いて、切なくなったり怒りを覚えたりしてしまいました。

 

「うちの子が担任をしているクラスに、親からろくに面倒をみてもらってない、勉強も遅れがちの子がいる。うちの子は、担任としてこまめに声かけをしたり工夫して接している。一方で、親に手紙を書いて、学校での様子を伝えて、家でも子供をもっとみてあげてほしいとお願いしたら、他人事のような納得できない返事が来た。あんな親、ありえない」

 

彼女は、自分の子の担任としての熱意を自信満々に、その子の不憫さには目をうるませつつ、最後には、母親の非常識さと無責任さには怒りを込めて、語りました。

 

わかってないんだなあ。

頑張って努力したものがちゃんと報われる人生しか知らない彼女には、わからないんだなあ、と思いました。

 

その子供はかわいそうだということは事実です。親の愛に包まれる幸せを知らずに育つことは、その子の人生を歪ませる、この上なく不幸なことです。母親が子供をないがしろにしているという状態も、間違いなく「よくないこと」であり、看過していいことではありません。

でも、だからといって、親に、直球で、「もっとみてあげて」とリクエストするのって、どうなんでしょうか。

 

母親がネグレクトになってしまっているなら、そこには、その母親自身の今までの人生の中で、そうならざるを得なかった理由が、必ずあるのだと思うのです。母親自身が、その子のように、親からの愛をもらえず、寂しい、助けて、と叫んでも誰にも助けてもらえないで孤独に生きざるを得ない人生でだったのであれば、そもそも、子供への愛情のかけ方も知らないのかもしれない。彼女自身が、障害や病気を抱えていて、しんどくて限界なのかもしれない。母子家庭で、食べるために朝から晩まで身を粉にして働いて、微々たる収入を得るだけでいっぱいいっぱいになっているのかもしれない。もし夫はいても、病気だったり、働かなかったり、彼女に暴力をふるったり、借金を作ってきたり、夫として父親としてちゃんと機能していなくて、母親が一人で踏ん張って生きているのかもしれない。とにかく、母親自身が、何かしらの問題やしんどさを抱えているから、子供に愛情が注げない状態にあるのだと思うのです。

 

彼女のように、家族がみんな健康で健全で、勉強や労働の努力をした分だけちゃんと報われて結果が出せて、社会的にも経済的にも安定できている人には、「親としてちゃんと愛情を持って子育てするべきなのに、どうしてしないの?」しか、見えないんですね。自分がやれる環境にあってやれてきたから、誰もがやれて当たり前だと思っている。

 

それをしたくても、しないといけないとわかっていても、できない母親もいる。そんな「できない」自分を、この上なく責めたり葛藤したりしている母親もいる。愛し方がわからなくて途方にくれてる母親もいる。

 

こういう問題は、専門機関の児相ですら、進め方に悩み、手探りで進めるものなのに、一介の教員が、「家でもみてあげてください」とストレートストライクを投げたところで、いい方向に向かうはずがないと思うのです。

そこには、明らかに、「あなたの育て方が悪いです。改善してください。」というオーラがあります。それでは、問題を抱える母親を追い詰めることはあっても、改善に向かわせることはないと思うのです。

 

突き詰めれば、まず救わなくてはいけないのは、子供ではなく、母親の方ではないでしょうか。母親の状況や心が安定してくれは、子供にも愛情を注げるように変わってくる可能性が高くなると思うのです。

 

人間、誰もが、自分の常識の中で生きています。私も、私の常識の中で生きているので、私の考えが万人に受け入れられる正論だとは思っていません。ましてや、私は、今の時代の教員の過酷な現状を体感しているわけではありません。彼女の子供も、担任として心を砕いてやっていること、うまく成功していることもたくさんあるでしょうし。だから、切なくなりながらも、少々の怒りを感じながらも、彼女の話は、「うんうん、そうなんだね、そりゃ大変だねーきついねー」と、ただ聞くに留めました。そして、その子が、これから先、少しでも幸せになれますように、と願いました。願うことしか、できませんが。

 

「ありえない」と感じる事象の背後には、そこに至る、「ありえない」と思うような、その人なりの事情や原因があるものだ、と思って、人を見ていけたらいいなと思います。みんな、頑張って生きていますからね🍀。

 

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先日、コスモスを愛でてきました。三色どの色が欠けても、この絨毯の華やかさがなくなりますね。素晴らしいコンビネーション。秋風に揺れるのがいちばん似合う花ですね。