大銀杏
さわやかというより、もの寂しい。
ひんやり、というよりは、冷え冷え。
そんな秋になってきました。
毎朝、灯油ファンヒーターが、ぼっ!と音と立てて温かい風を吹き出してくれると、猫がすかさず寄ってきて、じーっと見ています。目新しいのか、好きなのか。
先日、山あいの小さな町の小さな神社まで行ってきました。右は山の斜面、左は清流という、くねくね道を抜けて、車で1時間ほど。連れと、ちょうどいいドライブです。
目的は、境内の大銀杏。
樹齢は1100年。つまり、平安時代から、ずっとずっと、ここに立っているということ。全てに耐えて、全てを受け入れて、自然のままに、ただただここに立ち続けている。生命の強さですね。素晴らしい。時の流れを物理的に数えることはできますが、今日までどれだけ多くの万物の移ろいを見てきたことか、想像を越えています。
高さ48m。幹の周囲は8.3m。
どっしりとした雄大さは、ため息が出るほどでした。黄金色と言うには少し早かったのですが、見上げると、数えきれないほどの枝に数えきれないほどぎっしりとついている葉っぱが、青空をバックに、陽射しを受けて鮮やかな黄色に輝いていました。
ちょうど、どこかの高齢者施設のグループが来られていました。スタッフさんが、会話もままならない入居者の方々に、車椅子の前に回って、「すごいねー見えるー?きれいだねー!来てよかったねー!」と、目を見て話しかけておられました。入居者の方々も、今日まで山あり谷ありの人生を越えて来られて、今ここにおられるのだろうなと思うと、大銀杏となんとなくダブりました。
この大銀杏は、自治体の天然記念物にも指定されているそうです。神社の方々や樹木医さんや行政がサポートして、ここに立ち続けて、これからもずっと、ちっぽけな人間にパワーを与え続けてくれますように。
季節が進んで落葉すると、あたり一面が黄金色の絨毯と化すそうです。それはほれでまた素敵な景色ですね。来年は、その頃に行ってみたいと思います。